モーリス・ドニ(著)『理論集』(ビブリオライフ、2010年)

Maurice Denis (著)  Theories.  (BiblioLife, 2010)

昨日の勢いで、こんな本まで。。。
勢いは大事だよ。。というわけで。

まあ、わたしが好きで追い続けてる画家なんです。。
いつかは紹介しようと思って機会を狙っていました。。
アマゾンで試しに検索したら、あれ、理論集の新装版がでてる、ということで、これを機会に。

昨日ご紹介した、「ナビ派」の画家のひとりで、ナビ派を広めた人物です。
ゴーギャンセザンヌなどの先輩にあたる画家を評価し、装飾芸術などに尽力した画家のひとりです。
1870年フランスのグランヴィルというところで生まれ、パリ近郊のサン=ジェルマン=アン=レーというところに住んでいました。
アカデミー・ジュリアンという画塾にはいって、エコール・デ・ボーザールにはいるために勉強していました。
(当時は国立の美術学校にはいることが画家にとっての登竜門ですね。アカデミックな、といういい方がありますが、いわゆるアカデミーというのは、17世紀中ごろに設立した王立絵画・彫刻アカデミーを指しています。美術だけではなく、建築や音楽にもアカデミーはありますが、ここでは美術に限定してお話ししてます。この美術学校に入って、サロンという絵画コンクールで作品を発表して、入選すると一流の画家として認められます)
昨日紹介した、ポール・セリュジエやピエール・ボナールエドゥアール・ヴュイヤール、ポール=エリー・ランソン、フェリックス・ヴァロットンなどの画家たちと出会って、アカデミーの画家になることはやめて、新しい絵画を制作することに熱中します。
もちろん、その前にモネやルノワールのような印象派の画家たちがサロン以外の場所で絵画を制作し、発表していましたが、印象派とも異なる新しい絵画を作りたいよね、ということで、新しい絵を制作しようとします。

新しいって?それは一言でいうのは難しいのですが、前回のゴーギャンの言葉にあるような絵画のような鮮やかな色彩、ナビ派の場合には、それプラス、神話や宗教性のような主題がはいってきます。それを象徴主義という言葉でも説明できますが、ここはやはりドニの言葉で説明しましょう。。



「絵画とは、軍馬や裸婦や何らかの逸話である前に、本質的にはある秩序のもとに集められた色彩で覆われた平らな表面であることを思い起そう」


という(一部の間では)とても有名な言葉を言及します。
ドニは「新伝統主義」という新しい主義を提案します。
これが、1890年、若干20歳のときです。。。若いですね。


この、平らな表面という言葉には、後の抽象主義を予感させるような言葉にも受け取られていますが、実際には、そのあとに主題がきますよ、という意味であり、まずは絵画って色彩だよね、という単純な言葉だったりするのですが。




モーリス・ドニ《テラスの木漏れ日》1890年、オルセー美術館


こんな絵画を残しているので、けっこう抽象画じゃん、って思われれているのですね。。

画家でもあり、文章も多く残した人なので、ドニの言葉がその後の近代画家の説明で欠かせないものになっていたりもします。
昨日言った、ゴーギャンの言葉を伝えたのもドニです。2回その言葉を伝えていますが、微妙に言いまわしが違っていたり、ゴーギャンには実は会ったことがなくて、手紙でしかやりとしていなかったとか、いろいろなことがいわれています。
ポール・セザンヌという画家のことも尊敬していましたが、彼についての文章を記したり、実際に会いに行ったりもしました。
それが、その後のセザンヌの研究にも影響を与えていたり。
地味に活躍が評価されています。

そして、ドニのもっとも華やかな仕事は、室内装飾です。
たとえば教会やお金持ちのパトロンの自宅や別荘の壁や天井をパネルで飾ったんですよ。
パステル調のやわらかい線、しあわせそうな男女が戯れる姿には、誰もが心ひかれたのだと思います。
今見ても、結構素敵だな、と思いますよ。



こちらは、1899年に、初めてドニが公共建築物に装飾したものです。
先のサン=ジェルマン=アン=レーからほど近い、ル・ヴェジネというところにあったサン・クロワ・コレージュに飾ってあったパネルです。
コレージュ(学校です)の中にあった教会のための装飾ですね。
左右対になってます。正確には、4枚プラス風景画2枚から構成されています。





男の子がかわいい。。
現在では、そのコレージュにはなく、オルセー美術館で観ることができます。
もっとパステル調のかわいい絵もたくさんありますよ。。



メレリオさんご家族の肖像画です。
1897年の作品。これもオルセーで観れます。
よっくみると、細かい点描で描かれています。
地面の色とか、葉っぱとか。
子どもはかわいいですが、両親がどことなくぎごちないのは、ドニが初期ルネサンス(フラ・アンジェリコとか)の絵画に魅了されていたせいもあると思います。
子どもの表情は大変愛くるしいですね。


こんな熱弁ふるいましたが、全然一般的ではないでしょうね。。なので、わたしがこうして、普及活動しているんですが。。
いや、でも、ちょうど4月にモーリス・ドニの展覧会をやるはずです。たのしみにしていましょう。各地巡回するはずですから。
チラシがまわってきたら、ぜひともアップしたいと思います。

東京に来るのは9月ですね。
新宿の損保ジャパン東郷青児美術館へGO!


http://pid.nhk.or.jp/event/PPG0071201/index.html


そして、肝心のブックレビューを。。
そんなドニが記した論文を集めたものの抜粋が、いわゆる「理論集」なんです。
短めのエッセイが収録されています。
先の「新伝統主義の定義」も読めますよ、いきなり最初にでてきますよ、多分。。
もともとは、1912い年、ドニが42歳のときに出版された本です。
英訳も一部でていますが、結局これを読むには、フランス語しかありません。
もしかしたら、もしかしたら買う方もいるかもしれません。


↓こちらをどうぞ!


お買い上げはアマゾンで!