『バイス』を観る

映画観てきました。『マネー・ショート』のスタッフによる作品のせいか、かなりひねりも効いていて面白かったです。語り部はチェイニーとは無関係の男性なんですが、チェイニーと意外な接点が出てくるところがブラックで面白い。ネタバレになるのであまり言わないでおきます。

 

主役のクリスチャン・ベールがとにかくすごい。あなた誰ですか?っていうくらい違っていて、今どきのメイク技術もすごいし、体重増やして喋り方変えて、本当に役者としてすばらしい。

主人公はチェイニー元副大統領。日本でも、9.11.の際やイラク戦争云々のニュースの時には耳にした名前です。 政治に詳しいひとはいろいろ情報として知っているでしょうけれど、一般人からしたらその程度。でもその程度でもわかります。丁寧に説明してくれているし、わかりやすい。にしても、根っからの悪、というよりは失礼ながら少々小物感が漂うんですよね…学歴もそう高くはなく(イエール大学を中退)、特別政治に関心があるわけでもなく、奥さんは優秀だけれど、保守的な地域のため大学にも行けず、夫にすべてを託す、という具合で。酒に溺れて駄目な人生送りそうなチェイニーが一念発起して政治の世界へ入り、ラムズフェルドに弟子入りして政治を学び、ついにはラムズフェルドを追い越して副大統領になってしまう、んですが、それほどなんというか、政治家としてあまり魅力がなくて…政策もよくわからないし、全体的によく日本にもいそうな政治家臭ただようところがいいのかもしれません。結局見終わっても、そんなに悪くなかったのでは、というようにも思えました。よくわからない人物、とも映画の中で語られていたので、そのくらいしかわからなかったのかもしれませんが。あまりはっきりとは言っていないのですが、チェイニーはハリバートン社のCEOだったんだそうで、この会社、世界最大の石油掘削機の販売会社だそうで。ということは、イラク戦争でかなりの収益をあげているはずなんですよね。そういう情報がちらほら見えるだけで、ああ、黒い世界だな、と思ってしまいます。実際どれくらい儲けたかわかりませんが、CEOの退職金がすごい額で。それだけで裕福な生活が送れそうでした。

 

 『スリー・ビルボード』のサム・ロックウェルがブッシュ役っていうのもハマっていてよかったです。チェイニーよりブッシュの方がおばか扱いされていて、大丈夫?、となったのですが、アメリカ人はすごいなあ。生きてる人間がいてもこんな映画作れちゃうんだから。

監督のアダム・マッケイは、『俺たちニュースキャスター』というコメディ映画でもしられていますよね。すごくばかばかしくて好きな映画です。

こういう映画を映画館で観ると案外笑いが起きないのが不思議。わたしは随所でくすくす笑っておりましたが。アメリカ人ならゲラゲラ笑うのかな…。気になったのは、チェイニーがリステリンでうがいするところ。コップも使わず直に口に含んで、ぺっとするんですが、あれ、歯磨きの後水でゆすがないでリステリン?それに、直なんだ?とカルチャーショックでした。もしかしたら、オヤジ的な行動だったのかも。日本人からしたら、ああ、本場は違うな、という感想を持つばかりです。