観てきました!映画『アーティストThe ARTIST』

観てきました!『アーティストThe ARTIST』

おひさしぶりです。
観てきました・・・Eちゃんとともに。しかもおひとり900円!レディースデー万歳!シネスイッチ銀座さんありがとう!

というわけで・・・一言で言うと、マニアックな映画です。
まあ見方にもよりますが、わたしにはそう感じました。
映画のお勉強をすこしでもした方にはおなじみのサイレントからトーキーへと映画が移っていく時代。
主人公のヴァレンティンは、サイレント時代の大スター。彼の大ファンだった女性ペピーが、あることをきっかけに女優を志します。
そして、映画の主流はトーキーへと移り、ヴァレンティンは若者に席を譲ることになるのですが・・・。

サイレント映画の各種シーンや音楽を盛り込んだ構成になっているのですが、聴いた(観た)ことある、でもなんだっけ?
と、常にそんな感じにさいなまれました(笑)。映画のストーリーと音楽、場面、すべてがいろいろな映画の要素が盛り込まれてるんですよね。例えば、ぺピーの家にあるヴァレンティンの家財、これは『サイコ』を彷彿とさせますし、冒頭の映画内映画は、『メトロポリス』的な近未来感がありますし、そのくせ『怪傑ゾロ』のような華麗なシーンも登場します。あとは・・・勉強してきます、すみません・・・ヒッチコックの他の映画やバスター・キートンチャップリンの映像っぽいものもあったのですが、漠然としております。

映画はサイレント映画なのですが、その見せ方がすごい。はじめに映されるのは、映画本編かと思いきや、劇場の観客の様子などから、ああ、これは映画内映画なんだと気がつきます。主人公が主演した映画が流れていて、そこに舞台挨拶に主人公が登場します。
撮影の場面などが映されて、ああ、これは映画撮影の現場、映画スターの映画なんだとわかります。
主人公は、トーキー映画を映画の社長にみせられて、こんなものに未来はない、と言い切ります。
そのあと、楽屋に戻ると、物音だけが再現されて、音楽以外の「音」が画面から聞こえてきます。
犬の鳴き声やコップを置く音・・・ただし主人公の声は聞こえてきません。
そこの演出が本当に見事でした。

そして、主人公の没落がはじまるのですが・・・あまり話してしまうとネタばれになるのですが、説明しないことにはよさが伝えられない・・・。
ペピーという女性が、次世代の女優としてヴァレンティンの映画会社の看板娘になります。
はじめて主演を飾ることになったときの会話が印象的です。
老人は若者に席を譲るべきだと(正確な文言忘れましたが、こんなニュアンス)。
その席の後ろには、背中あわせにヴァレンティンがいます。
立ち上がって彼女を見て、「どうぞ譲ったよ」と言います。
この場面の撮り方が、いかにも古典的ハリウッドという感じがしました。

この映画でわたしがいちばんいいなと思ったところは、ぺピーがすごくいい娘だということですかね。
映画内映画に、「守護天使」というものがでてくるのでが、まさに彼女の役割を象徴していると思います。
下手なラブロマンスに陥らないところが、ほんとうにすばらしいなと思いました。
最後まで観て、ええ、そっちっすか?と正直思ったのですが、でも映画史の流れ的にはそれだよな、と妙に納得。

実に軽快で、サイレント映画のよさを改めて実感する映画でした。
ただし、ハリウッドが舞台ですが、これはフランス映画なんだろうなと思いました。
なんていうか、作りこんでる感が。同時に映画業界人大好きな映画なんだろうなー、とも思いましたが(笑)。
映画の教科書的扱い受けそうな映画でしたね。
久しぶりにわくわくする映画を観ました。
ペピー役のベレニス・ベジョもヴァレンティン役のジャン・デュジャルダンもほんとに演技がすばらしかった。
それとペピーの演技で、彼のスーツに手をしのばせるところが本当に美しい。もちろんヴァレンティンの演技もコメディー俳優のよさが最後まで通して感じられました。
それと犬のアギーと運転手もかなりの名演でした!特にアギーがいなかったら、この映画はこれほど魅力的にならなかったかもしれません!犬好きは必見映画かもしれませんね。


セザンヌ等の展覧会評はまたあとで。