いい映画でした・・・ポランスキー監督の「ゴーストライター」

いい映画でした・・・ポランスキー監督の「ゴーストライター

何の前情報もなく、観に行きました。
・・・・結論からいうと、今年観た映画のベストにあげてもいい!!
わー、好き、このノリといい、テイストといい、好きです!ラストまで飽きずに、ストーリーにひきずられる!

ゴーストライターというのは、元首相の自伝のゴーストライターのこと。
主人公は気乗りしませんが、面接を受け、引き受けることに。
不気味なのは、前任者マカラが死んでしまったこと。
1ヶ月の締切という制限はあっても、ただ文章を書きうつすだけのことなんですが。その自叙伝はある場所でしか読むことができないという。
その場所、アメリカの孤島に連れて来られ、主人公は、ラングにインタビューしながら原稿を書き直し、執筆をすることになります。なぜそんな島に連れて来られたかというと、そこに元大統領のラングの家があるからです。
仕事はなんとかこなせると思われましたが、元大統領に戦犯容疑がかかります。
ちいさな島は大混乱。デモ集団がラングの家のまわりに集まります。
けれども、マカラの荷物などを探るうちに、主人公はあることに気がつきます。
マカラの残した形跡を追っていくうちに、話がどんどん進んでいきます。
そして、厳重にしまわれた自叙伝に隠された秘密にも・・・。


このレビューを書くのはすごくむずかしい・・・ネタばれてしまうので。とりあえず筋より全体の印象を・・・。
冒頭からして、かなり印象的でした。フェリーが入港し、車が一台、運転手がおらず、止まったまま。
後続車がどんどん抜かしていき、観ているほうは、それが爆発でもするのではないかとはらはらさせられますが、何も起こらず、次のシーンで、人が海に流されてきます。
その後は、アジアンフードを食べて世間話をする2人の男性ビジネスマン。
主人公と友人で、この事件とそれに関わる仕事の話。
はじめの展開だけすこしわかりにくいのですが、いずれわかりますし、あとはほんとうに小説の筋を追うような丁寧な展開です。
音の使い方も効果的で、画面もよけいなものをいれこまず、わかりやすくシンプルです。
ラストの最後の映像は、うーん、さすがポランスキーとうなり声をあげてしまうような、そんなショットでした。

すごいなと思ったのは、主要人物であるマカラは、映像に全くあらわれず、彼らの言葉にでてくるだけ。
そして、見せ方がほんとうにすごい!はじめヴァージンの飛行機で島に向かう主人公。
なんとなくヴァージンという字が気になります。
ラングの自家用機の飛行機のロゴ。これがやたらでかでかとでて、気になる。それが何かはあとからわかるのですが、ああ、そうか、あれかと、記憶が戻るんです。その見せ方が安っぽい映画のように、画像をもう一度使ってフラッシュバックしたりしません。ああ、と観ているほうがわかるような印象を先に与えてくれてるというか・・・あ・・・言ってること通じているか心配になってきた。
ショットも派手ではなく、アクションといえるものもなく、イギリスの空のような薄暗い雲が広がっている描写がとても多いのですが、そういうのがいいなと思いました。モノクロのサイレント映画を観ているような感覚があって、好きです。ヒッチコックとかそういう世界です。
推理、政治サスペンス的な内容なのに、すごく静かなんです。それがいいなと。

それから、主人公もラングも英国人ということもあり、やたらと英国の描写がでてきます。
それも英国好きにはたまりません。英国ジョークにクィーンイングリッシュ。会話もやけにウィットにとんでいます。
take business distance だったかな・・・うろ覚えですが、「仕事するならちゃんと距離とろう」的な言いかたをするのですが、そういう言いかたとか。これってもしかしたらアメリカでも使うのかもしれませんが・・・。割とイギリス英語って、日本語の感覚からいけるというか、他のヨーロッパ言語とも表現の共通点が多い気がします。そのせいか、なんとなくわかったような気がしてしまう。あくまで気がするだけです。


主演のユアン・マクレガーの一人勝ちのようにも見えましたが、ラング役のピアーズ・ブロズナンもいい味だしてました。
ラングの奥さん役のオリヴィア・ウィリアムズと秘書役のキム・キャルトラルもよかったです。
特にオリヴィアさんは、知的で演技派と思いました。それもそのはず、ケンブリッジをでた舞台女優なんですね。
もっと映画にでてほしいなあ。
個人的には、ユアンが自転車に乗ってちょっとコケるところがやけにはまりました。
あと、使用人が貸してくれた帽子のにおいをかぐところ(笑)。
着眼点がマニアックですが、ああ、わかると思いました。
そして、やはりヨーロッパの香りがそこここに漂う感じも好きでした。あ、やっぱりそうくる?という場面がちらほらと。
警備がなんとなく手薄な感じもヨーロッパという感じがしました(ひどい)。
それにしても、元首相の家なんだから、英国人のメイドさんをつかったらいいのに、なぜか中国系。
なんでなんだろう、そこはひそかに疑問でした。
ポランスキー監督の映画は、最近では「オリバー・ツイスト」がありましたよね。あれも映画館で観たけれど、好きだったなあ。洋服と蚊の質感が。

うーん、よさを語るには難しいのですが、推理もの好き、英国好きは是非!