人生いろいろあるもんだってことで

なんとなく、自分の仕事関連のことをさらしたくなる病。
前にもこんなことしたな・・・。
今回はですね・・・金にならない仕事の話(笑)。
いや、正確には、金が稼げない仕事といいますか。

これを仕事ととるか研究ととるかはひとによりますよね。
仕事というのを前は憚っていたのですが、考えたら、お金もらえる=仕事でいいんじゃね?ってことで。

前置きが長くなりました。
いまやっているのは、文献表作成の依頼と、それに関する研究論文一本。
はい、意味がわかりませんよね。
よく、展覧会カタログとか美術書の後ろのほうに、参考文献って載ってませんか?
あれです、あれ。
わたしが今やっているのは、とある画家の邦文文献表です。
日本語で書かれた初出から最近のものまで、調べて表にするわけです。
まずは、過去の参考文献表をあさります。カタログや書籍など。それであたりをつけておきます。
本格的に調べるにはツールがありまして、雑誌に関しては、『美術関係雑誌目次総覧. 明治・大正・昭和戦前篇』です。
うわ・・・7万円??図書館で十分です・・・。
これが刊行されたから、調査がかなり楽になりました・・・すばらしい。
これ、3冊ありますから、かなりのボリュームです。索引で、例えば「モネ」と引きます。そうするとページ数がでてきますので、それをチェックすると、例えば●●著「(論文タイトル)」『中央美術』、●号、●巻、●頁といった情報がでてくるので、図書館で本を実見、コピー。また次の記事を調べて、実見、コピー・・・これを延々と繰り返します。
それをデータ化して、表にしていきます。
この本だと、カタログや一般書籍は調べられないので、それは、とりあえずWebcat等で調べます。
所在図書館をつきとめて、実見、コピー。すぐに手にはいるならいいですが、ときには、とんでもないところにしかないことも。本自体がないこともあります。買えるものはネットで購入してしまうことも(実費)。
もちろん検索でひっかからない本もでてきます。
それに、こちらの本には記載されているのに、こちらにはないとか、情報の祖語やらもろもろ問題が発生します。
そして一通り終わったけれど、検索してもでてこなそうな本がありそう・・・その場合には、目星をつけてとにかく見る・・・。アナログ作業です。
表にするときに間違えると大変なので、コピーしたものを確認しながら、年代順に書いていきます。
終わったら、確認作業。これが面倒。というか、ちゃんと打ち込まないと。
書籍データだけなら楽なんですが、それら書籍に記載された作品データやレジュメを書き込むことも。
とにかく地味な作業を続けて、ようやく完成です。
はあ・・・。もう途中で、コピーとかいやになってきますし、体力がいるし、正確性が問われます。


もひとつの仕事。研究論文。
これは・・・要は論文です。ふつう一般の人は目にしません。大学の紀要や一般書とは異なる専門的な雑誌などに載っている論文のことです。
これを書くだけではもちろんお金はもらえません。
これを書くのに、さまざまな助成金などをもらうわけです。もしくは、所属がきまっているひとは、その機関で仕事をすればいいわけですが・・・。わたしのような中途半端な身分のものはもっぱら外部からもらいます。
今回は某財団さんからいただきました。
これを糧に書くわけです。もらわなくても、研究を続ける以上書かねばならないものなのですが、ペースはひとによりさまざま。若手は年に一本程度書くとよいとされます(たぶん)。
わたしは昨年一本書いたので、今年分を書きます。
どんなことを?書く内容によって、その方法はだいぶ異なります。

いちばんわかりやすいのは、たぶん作品そのものを調べるやり方でしょうか。
すこし前に書いたものを例にとります。
とある美術館に所蔵された作品の来歴と関連作品を調べるというもの。
来歴は、美術館にはいってきたときの記録をみせてもらえば探ることができます。●●という画廊から買った、という記録があれば、それに従うわけですが、ときにわからない、はっきりしない場合があります。それを調べるには、画廊さんに聞くしかありません。わたしはフランスの画家について調べているので、当然画廊さんもフランスです。問い合わせた結果、番号が絵にあるはずなのですが、それがわからないと調べようがないと言われました。けれど、絵は後から板がはめられていて、よっぽど大がかりな修復でもしないかぎりは調べられません。調査はここで断念。仕方ないので、関連作と資料を調べます。といっても、関連作は消失してしまってない・・・残された道は資料を探ること。画家の記録や日記や書簡などから、どういう経緯で作品が作られたのかを探ります。もちろん、資料は日本にはありません。フランスの図書館や美術館の資料室をあたって、とにかく探します。関連作はドイツに飾られていたので、資料はドイツにもありましたが、そのときは、日程的に行けなかった・・・コピーがブリュッセルの王立図書館にあるというので、ブリュッセルに足を延ばしました。別の資料も見せてもらって、かなりの数の書簡をゲット。そのうち作品に関するものを書きおこし(手書きで読めない文字もあるので、知り合いに頼んで読むのを手伝ってもらいます)、翻訳します。それを論文で反映させ、そこから抽出したものを、テーマを焦点を絞って、書きます。
フランス語の能力はもちろん必要ですが、これらをまとめるには、ある程度の研究センスも問われます。トピックスをひきぬくのに、それなりにあたりをつけなくてはならないし、ひきだしたところから導かれる結論にもそのひとの解釈がはいりますので、最終的には自分との闘いです。

・・・以上です。かなり端折りましたが。
伝わるかどうかわかりませんし、プロセスはひとによりだいぶ異なります。
そのときはこんな感じでした。分量的には、原稿用紙で30枚程度でした。
うん・・・これは本当にお金にはなりません。好きじゃないと続けられません。
そして、やったとしても誰にも褒めてもらえません。せいぜい仲間内で読んでもらう程度のことです。
いや、そんなことを言ってはいけない。あの世界では、これが大事です。学問に対して真摯な態度をとらなければなりません。
ちなみに、「孫引き」という言葉を知っていますか?原文を取り扱わず、原文を載せている本を引用することです。これは、研究者によっては嫌うひともいます。一流の研究は一次資料からなる、という定石があるからです。わたしもその意見には基本的には賛同です。ですので、たとえ書籍として一部刊行されている資料があろうとも、できる限り現物にあたろうとしています。
このようにして成り立っている論文・・・これに一般の人が興味をもってくださる可能性は万に一つ。
わたしは、研究者以外の方がこれらを目にすることはないと思っていました。長いこと。

でも、最近そんな機会があり、目にしていただけるかもしれないと思い、かなりうれしかったんです。
うれしかった、と過去形で書きますが。万一まだ読みたいと思っていてくださるのであれば、話は別ですが。
もうわたしに毛頭興味ないだろうし、このブログも読んじゃいないだろうから書いてしまう。
誰に向けたメッセージなのやら。とにかく、いまさらながらプライドを踏みつけられた思いをどう表現いいのかわからず、ここで。。。やっぱりね、ひとの気持を理解できないひとだったってことで(笑)。わたしだって怒る時は怒る。利用された感しかないけど、ほんとにこんなにむかっぱらがたったのってひさしぶり。論文盗作以来だな。



ともかくも、これがわたしの副業です。
本業についてはとりとめもなさすぎて書く気にもなりません(笑)。
今日はこのへんで・・・。


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