手塚治虫(著)『奇子(上)』(角川文庫 、1996年)

手塚治虫(著)『奇子(上)』(角川文庫 、1996年)

なぜかこれをレビューしてしまうわけのわからない状態・・・。
これ、レビューできるような軽いノリの漫画ではない・・・。

なぜ・・・これ読み返すのに1時間くらいかかったから、乗りかかった船というやつです。
戦後GHQ占領下の日本。ある旧家での出来事をノンフィクションさながらに描いていく異色手塚漫画、とでもいいましょうか。


下山事件がからんできます。え、何それ?とお思いの方のために、wikiってあります。

下山事件(しもやまじけん)とは、連合国の占領下にあった1949年(昭和24年)7月5日朝、国鉄総裁下山定則が出勤途中に失踪、翌日未明に死体となって発見された事件。
事件発生直後からマスコミでは自殺説・他殺説が入り乱れ、警察は公式の捜査結果を発表することなく捜査を打ち切った。下山事件から約1ヵ月の間に国鉄に関連した三鷹事件松川事件が相次いで発生し、三事件を合わせて「国鉄三大ミステリー事件」と呼ばれる。

wikipedia下山事件」から転載)


松本清張先生が『日本の黒い霧』という本を書いていますね。
これも読みましたよ・・・。
ううん。。まるで小説のような事件です。
これがうまく前半の山場にもりこまれているんです。
主人公の天外(てんげ)仁朗は、GHQの秘密工作員として働いていたのですが、ある殺人に関わってしまうんですね。
それが下山事件。実際の事件をからませてますが、もちろん仁朗がほんとうに下山事件に関わったわけではないですよ。ここはフィクションです。
ふつうはここで彼が捕まって終わり、という流れになると思うのですが、そうはならず、この天外家の社会とは異なる独自のルールが存在しているのです。
歯車の狂った家族!そう言っていいんじゃないですかね。。
一家の家長である父が、長男市朗の相続権でゆすり、息子の嫁と関係をもってしまう。
そして、奇子(あやこ)という女の子が生まれるのですが、その子は、戸籍上は父と母の子。
その子が生まれた後もなんだかんだと理由をつけ、市朗の嫁と関係をもちつづけるという・・・。
これだけで嫌悪感ある人いると思うんです。
それで、まあその途中、仁朗が殺人に関わったことがばれてしまうんです。
彼がシャツに帰り血を浴びて、シャツを洗ってるところを奇子に見られちゃうんですよ。
それだけですんだならよかったのですが、警察の前でそのことを奇子が話してしまって。
そして弟の伺朗がなぞ解きを解くように、仁朗の殺人をあばいてしまうんです。
ちゃんとそのシャツの切れ端をもっていてですね・・・でもそれは天外家のひとびとにもみ消されちゃう。
奇子は口封じのために家の地下牢に幽閉されてしまうという。。。死亡届けまでだされて、完全に存在を消されているんです。
外の世界を知らない奇子は、唯一接触のあった男性である伺朗と関係をもってしまう・・・!え・・!
伺朗の言葉によると、天外家は犬猫のように血縁関係がまざりあっているのだとか。。。
でも奇子、かわいいんですよ。。。エロティックな手塚先生のタッチが・・・。
もちろん二朗も生きています!彼はどうなっていくのか、奇子はどうなるのか。
途中ですけれど、結末はきっとおそろしいことになるのでしょう。何せ手塚先生の漫画ですからね。。
これはもう壮大な抒情詩のようです。


続きはまた!