巌谷 国士 (著) 『シュルレアリスムとは何か』 (ちくま学芸文庫、2002年)

巌谷 国士 (著) シュルレアリスムとは何か』 (ちくま学芸文庫、2002年)

まじめなレビューですみません。
ちょうど、今日、六本木の新国立美術館シュルレアリスム展をみてきたんですよ。
いや、すっごい量でしてね。。アンドレ・マッソン(多分世の中的にはメジャーじゃない画家)がものすごい量ありまして。
みたことないものもたくさんあって、ぐるぐるみて回ってました。。いや、すごい量だな(また3回言った)。
ポンピドゥー所蔵作品だけの展示ですが、どんだけ持ってんですかね、ポンピドゥーさんよ。。
ビデオを含めて、真剣に見ると軽く3時間はかかります。。いろいろ流したりしても、1時間半はがっつりかかりますね。。
でも、それだけ作品の力もあるってことなんですよね。疲れる展覧会というのは、いいものだったりします。
それで、カタログに巌谷国士先生のお名前があったものですから、感謝の意をこめて、レビューしようというわけです。
もちろん先生はわたしのことなぞ知らぬ存ぜぬでしょうが、要は自己満足です。。

この先生のお名前、ご存知の方もいらっしゃると思います。。きっとその方はシュルレアリスム関係の本を読まれたことがあるんじゃないですかね?
シュルレアリスムを語る上ではなくてはならない方といえるでしょう。

シュルレアリスムって一体なんぞや。。。




―シュールでしょ、知ってるよ、なとかイズムだから、主義ってことでしょ。
―シュールだから、キモい主義とか?
―マジで?ちょーやなんすけど




全然違います。一瞬、アホな子の会話が降臨してきましたが、違います。。

だいたい、シュールと言うことが多いのですが、本来はシュルです。。しかも、シュルで切ってはいけません。シュルレアリスムで一語です。
超現実とも訳されますが、自動筆記とかオートマティスムって知っておられますか(なんで今日こんな話し方)?
何も考えずに書き続けると、自分の意志とは無関係のことを書きだすという、心理学的アプローチ。。
これで、現実を越えた、倫理観とか必要のない現実、常識的考えをとりはらい、無意識や意識下の反映された文章を書けるというのです。
これ、フロイトの影響を多分に受けたやり方です。フロイトってすごい。。もちろんフロイト自身も芸術に関して言葉残しておりますが、精神分析の方法で、真理を導こうというのですから。
まあ、すごいです。この頃の理論も実践も、分野もリンクしていて、非常に興味深いですね。
1920年代というと、両大戦間。。。混乱した時代です。芸術世界でも秩序を求めたりする一方で、このシュルレアリスムの方法は、ある意味で自己完結的といいますか、自分の世界の中で決着がつけられる方法ですよね。
非常に今の時代に合っている気がします。。



そんな感想は置いといて。。。
アンドレ・ブルトンという人が1924年に「シュルレアリスム宣言」をするんですよ。
ブルトンは詩人ですから、そういう概念が重要だったのはよく理解できますね。
それで絵画運動へとも発展していき、マックス・エルンストルネ・マグリットサルバドール・ダリのような画家たちが活躍していくわけです。
作品は、画家たちによってだいぶ画風が異なります。
日本語の「シュール」が当てはまるようなものが多いですね。
そうですね・・・・脳みそがとろけそうな。。。そして、倫理観などから解き放たれておりますので、時折ものすごいエロスが放出されております。
漫画規制とか、いろいろ言われておりますが、このあたりの絵のがよっぽどやばいのもありますよ!!
有名なのは、顔が女性の身体ってやつですかね。。ルネ・マグリットの《凌辱》ってやつです。。試しに画像検索してみてください。
これ、展示されてました。もしくは美術館へgo!(宣伝マン的発言)
こんなの序の口ですよ。。わたし、ここでは口に出せないようなエロス体験してきました。不思議とまじめに考えながらみてましたけれどね。

あ、そうだ、自動筆記と似てますが、画家たちが絵をそれぞれの部分を書いていったものも展示されておりましたね、@新美。
Aさんが頭かいて、Bさんが上半身、Cさんが足のもも、Dさんが足、みたいなかんじで。それをつなげるんです。たいていめちゃ大変なことになってますけれど。。
これって、絵チャットとかにも似てませんかね??十分現代の遊びにも通じるなあ。。
ともあれ、なんでもアリな美術の世界って、ほんとエキセントリックです。



さて、そんな世界をわかりやすくつづった本著。
そんなシュルレアリスムの専門の方の本ですから、さぞかし難しいとお思いでしょう。。。いえ、そんなことはありません。
講義でお話されたことが元になっているので、とても読みやすいですね。
ちょっとでも堅めの文章を読んだことがある方であれば、サクサク読めますよ。
三部構成で、シュルレアリスム、メルヘン、ユートピアが口語調で書かれています。
多分一部だけでも読む価値あるんじゃないかと。



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マックス・エルンスト (原著), 巌谷 国士 (翻訳) 『百頭女』 (河出文庫)もご紹介しておきます。
シュルレアリスムの代表的画家、エルンストによる版画です。
半分以上は版画です。すごく面白くて、キモいです。でも大好き!


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