丹尾 安典 (著)  『男色(なんしょく)の景色―いはねばこそあれ』新潮社 (2008)

丹尾 安典 (著)  『男色(なんしょく)の景色―いはねばこそあれ』新潮社 (2008)

 そういえばこの本を読んだという同僚の話をきいたのをふと思い出しまして。。
 日本文化においては、男色こそ王道だったという本著の主張、どこか現在のBLブームを予感させていたかのような、いえ、むしろずっと昔からあったように元気づけ(?)させてくれます。
 「万葉集」から男性の同性愛誌「薔薇(ばら)族」まで、縦横無尽に男色視点で書かれている本著。好みもありますので、評価が分かれるところがあるかもしれません。
 なんと、川端康成の『伊豆の踊子』ですらも、男色になってしまうのですから・・・(詳細は本著をご確認あれ!)。会津八一と世良延雄、片上伸と井伏鱒二と青木南八、三島由紀夫と堂本正樹ら、江戸川乱歩竹久夢二などが男性間の恋情を語っております。。それから、これを読むと、仏像見る目がかわります、たぶん。興福寺八部衆像のうちの阿修羅像は天平の典型的な美童だそうです。そんなこと言われなくても感じていた!という方もいらっしゃることとは思いますが。。
 前々から研究者や一般の読者たちにもうわさされていたあれやこれやがわかります。
 丹尾先生は「その他美術史」と自称されていることもあり、春画、漫画、戦争画、通常の美術史では扱われてこなかったジャンルに積極的に挑んでおられ、着眼点がすばらしいと思います。
 250頁あまりありますが、どの章から読んでもいいそうですよ。文学の知識がないとついていくのはつらいかもしれませんが、BLの素地があれば意外とサクサク読めるかも??


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