吉田秋生(著)『河よりも長くゆるやかに』(小学館文庫、1994年)

吉田秋生(著)『河よりも長くゆるやかに』(小学館文庫、1994年)


ごほんごほん。
昨日レビュー見てるよー、とありがたい言葉いただいて、急にあらたまって書いてみたりするけれど、どうせわたしの文体なんぞ一日二日で変わるもんじゃないし・・・結局通常営業・・・。

吉田秋生先生作品シリーズ(勝手に)!
かなり好きなんですよ・・・。
前にレビューした『桜の園』の男の子版といいますか・・・。
実は掲載は桜の園のほうが先なのですが。
そして、文庫あとがきで夢枕獏先生が『吉祥天女』のほうと比べていますね。
うん・・・しかし、あえていいましょう。むしろこの作品は『桜の園』と対ではないかと。。
高校生のトシ、深雪、秋男の2人の悪ふざけ。
トシちゃんはバスケが得意なおもしろい男の子。深雪君もスポーツよくできるかわいい男の子。秋男君はトシちゃんをダシにお金儲けしたりエッチ本読んだりするちょっとオタク風味な男の子。そんな3人が暴れまくって。
ゲイバーでバイトしたり(おもにトシちゃんが。深雪君もつれていかれて女装させられたり)、大麻吸ってみたり、ナンパ、エロ本、成人映画にスケベ!
おもしろおかしい男子校ライフ!
演劇もしますしね!もう、とんでもない感じですが。


もちろん吉田先生ですので、ちょっとホロリとさせるところもあって。
トシちゃん、お姉さんさんと二人暮らしなんですよ。
それでバスケやめて、バイトしなくちゃいけなくなったりして。外国人のいるゲイバーで夜働いているんですよ。
お姉さんも水商売なんてやっていて。
お父さんが浮気して、離婚して、そのうちにお母さんが亡くなって。
お母さんの遺言で、月一回手渡しでお父さんから生活費をもらうトシちゃん。
そんな暗い闇の部分があって。
それなのに、というより、それとは無関係にハチャメチャな高校生活。
深雪君のお父さんは悪徳高利貸し。
けっこうお父さんとの確執があるけれど、それでもお父さんをうらめずにいて。

そんな彼らがほんとうに「おばか」をやりまくるんですよ。
主に性のお悩みが多いのですが。
トシちゃん彼女いるんですが、彼女とそういう雰囲気にもっていくまでが面倒で。
「でもそれが時どきスッゴクめんどいの!!もうめんどくてイジイジイジイジしちゃうの!!」
って。
このわなわなした顔が・・・・!男の子ってこんなこと考えてるのかという、おもしろおかしいことがいろいろと。


わたしの脳裏に残るエピソードは、お姉さんがたらこをお弁当にいれちゃうこと(何に見立てているのかはあえて言うまい・・・)と''大地とファック''(腕立て伏せのこと)50回。
あとトシちゃんのセーラー服姿(ノーパン)とあんバタ(フレンチトーストの間にこしあんとマーガリンが入ってる)ですかね。。
それ食べてトシちゃんじんましんできちゃうの。
わかるわー。わたしもあんこ系の甘いもの苦手なので(多分共感はそこではない・・・)

技的には、コークス・クリュービンタですかね。。
手のひらがほっぺたにインパクトした瞬間ツメをたてひじをつかって手首に回転を加えダメージを倍増する高等技法!
伊達さん(はじめの一歩)と比べどちらがつよいか・・・喧嘩だったらこっちもかなり効きますね。
伊達さんが奥さんの愛子さんにやられでもしたら、かなりのダメージ受けるでしょうね。どうでもいい妄想です・・・。


いい話としてはですね、トシちゃんの彼女の友だち(トシちゃんの友だちでもあるんですが)の順子(よりこ)ちゃんが訪ねてきて、話をしているうちに順子ちゃんが無理やりやられたことがあるという話をして。トシちゃん、口で説明とか慰めることとかできなくて。彼女の上にのっかって、「おまえ言ったろ。人間の重みって気持ちいいって」って。なんにもしないで、ただ乗っかってあげるんですよ。。。いい話じゃないですか・・・。ほろり。


実は順子ちゃん、トシちゃんが好きで。
でもいつか忘れないとならない恋ってわかってて。深雪君とデートしたときに、「いつか忘れたいな。車のライトがきれい。まるで河の流れみたい」って順子ちゃんが言うんですよ・・・。いい台詞だなって。
この漫画の題名にもつながると思うんですが。
ゆるやかな日常。
昨日のお能漫画とはまた違う、ゆるやかさですね。
なんというか、高校生活永遠なれ、という感じの。
この一瞬がずっと続けばいいのに、でもときどきせつないくて長く感じると思わせるような。
なんかうまくいえませんが。

高校生活、そして男子校の一部を垣間見る、というか、ほぼ全貌じゃないかというほどの心理描写。
さすが吉田先生といわねばならないクオリティです。
異世界の話もいいのですが、こういう日常の話すごく好きだなあ。。。



というわけで、今日はこれまで!