久しぶりに映画館で泣きました・・・『ビューティフル』

久しぶりに映画館で泣きました・・・『ビューティフル』


みなさんが好みかどうかはわかりませんが・・・わたしは相当好みな映画でした。
現に・・・久しぶりに映画館で泣きました。年なのかな・・・(禁句)。
これね、綴りがBIUTIFULになってるところがポイントで。
これが主人公のすべてを物語っているといってもいい。

主人公ウスバルを演じるハビエル・バルデムは、『ノーカントリー』で知られていますよね。あの怪奇殺人鬼は記憶に新しいのではないでしょうか。あれ以外の役ってどうなのかな、と思っていましたが、いや、スペイン語のせいもあるでしょうけれど、さすが役者ですね。他の俳優さんは・・・全然しりません!それもそのはず、この映画デビューの俳優さんも多いそうでして。


とりあえず、あらすじ。
舞台はスペインバルセロナ
想像している観光客のたくさんいる観光地としてのバルセロナではなく、路地裏のバルセロナといったらいいでしょうか。
そこにはアフリカの移民や中国人労働者など、多くの移民がおり、さまざまな裏取引が執り行われています。
家庭環境も複雑です。
ウスバルも、2人の子どもはいますが、妻とは別居。妻は精神の病を抱えています。
唯一生きている身内である兄も、裏取引に関与する一人です。ウスバルも裏取引に関与した仕事をしています。
あるとき、ウスバルは病院で衝撃の宣告を受け、余命わずかであることを告げられます。
けれども、現実は過酷なまま。
病状のよくなった妻のところへ子どもと一緒に引っ越しますが、そうそううまくいきません。
また、ディーラーになっていたアフリカ人たちの商売も警察に検挙され、仲の良かったアフリカ人の友だちは妻と離れ離れに。
世話をしていた中国人たちには事件が起きます。
厳しい現実と迫る余命。それでも彼はなにかを信じて、生きようとします、最後の整理をつけながら。


こういう映画を観たときに、救いをもとめてしまいませんか。わたしは少なくともそうです。
唯一一度だけ、家族団欒の場面があります。家族4人で溶けたアイスクリームを食べるんです。
この場面でまず泣きそうになりました。そこで語られるエピソードが秀逸で。
そして、お父さんと娘がソファで、おじいちゃん(ウスバルのお父さん)の写真を見ながら、語る場面があるのですが、そこも救いの場面。


フクロウは死ぬときに毛玉を吐く、という台詞が3回でてきます。
この物語のテーマでもあると思うのですが・・・毛玉ってなんでしょうね。この映画で。
わたしなりに解釈すると、ウスバルがフクロウで、毛玉は、このひとの人生。
ウスバルは、移民を助けながら、彼らに仕事を与えるかわりに金をもらう、子どもへの愛情を見せながら、しつけに厳しく、妻を愛していながらも、子どもを守ろうと妻から離れようとする。生きたいのに、生きられない。霊媒師のような第六感をもちながら、死ぬことが恐い、死にたくないと思う。
毛玉って・・・自分の毛ですよね、自分の一部なのに吐きだしてしまうのって、なんだか矛盾してませんか。
ネコとかもそうだといいますが、自分の成分なんだから、飲みこんでしまっても問題ないだろうに。
それって、もう自分の細胞とは認めてなくて吐きだしちゃうってことなのかな、と。
自分の体や頭で思っている自分ではない、みたいな。
まあ、ほぼ妄想的なものなので、きちんとした分析は専門家にゆだねましょう。。。

ウスバルは、とても繊細で、気難しくて、真面目で、でもビューティフルは綴れない、お金はほしい。霊と交流できる裏の面もあって。この人物、ほんとうにうまく演じられてましたよ。さすがアカデミー主演男優賞ノミネートだけありますよね。
妻マランブラ役のマリセル・アルバレスもよかったです。心の揺れをうまく表現して、上がったり下がったりしてるんです。なんていうか、映画においてこういう女性って多いのかな?というか、ここ最近私が観てる映画の女性がみんなこのタイプだな・・・。総合失調症というか、パーソナリティ障害といいますか。多いんだなー、今。


この映画をふつうにしていないのが、霊です。こういうホラー的なところが、うまく現実に組み込まれてて、不思議な印象がありました。映像もまた、きれいでした。なんというか、悲しすぎないようにしているんです。
死んだ人がたくさんでてきますが、それも殺している場面は描きません。まるでものみたいに映してる。
ウスバルのお父さんも、なんだか人形みたいで。そういう描写がとてもうまいなと思いました。
一度だけ、ガウディが設計したバルセロナの観光名所サグラダ・ファミリアがでてくるのですが、それはウスバルのいる病院の窓から見えるだけ。このあっさりだすところがなんともうまい。
動きのある場面としては、裏取引と路上販売してたアフリカ人が逃げていく場面。このカメラワークが、誰か特定の人を映しているのではなく、ある意味リアルに観ている視線なんですよね。あれ、アフリカ人追ってるはずが、声がきこえたから倒れたあばあちゃんを追っちゃった、みたいな。観客視点なんですよ。
それから、鳥が群れをなして飛んでいく場面があるんですが、何気ないシーンですが、わたしはここが好きでした。
ウスバルが見ている風景で、ああ、切羽詰まった時でもこういうの見ちゃうよね、という、なんとなく納得して見ちゃうというか。まあ、要はわたしがこの監督が好きってことなんだろうなあ(笑)。

監督は、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。『バベル』でよく知られていますね。わたしは、『アモーレス・ペロス』でひじょうに好感もっていました。『バベル』も観なくちゃな・・・。
スペインの現状ってこんな感じなんだなと、しみじみ思いました。
ヨーロッパはどこもこんな感じなんでしょうけれど、中国人の勢いがすごいなあ。それにアフリカからの移民も。
ヨーロッパへ行くと、なんとなくうろうろしている人いるんですよね。。。あー、裏取引やってるのかなあ、と、こういう映画観ると想像しちゃいますよね。偏見とかそういうことではなくて、社会を知るというか。


ちなみに、わたしが泣いた場面は、お父さんと娘がトイレで抱きあう場面です。。。思い出すだけで泣ける。
それから、ショッキングなのは、中国人同士が同性愛者で、こちらはこちらでドラマが展開されていたことですね。
結構有名な中国の俳優さんらしいです。これはこれで別の映画撮れそうだなあ。

公式サイトのリンク貼っときますね。


http://biutiful.jp/index.html



今日はこのへんで。