『危険なプロット』を観る

フランソワ・オゾン監督の最新作を観てきました!
いやー…このタイトルで「危険」であることがバレてしまうわけですが、レビューはネタばれのないようにしていきたいと思います。

一言でいうと面白かった!ストーリーは割とゆっくりと進んでいくので、前回観た『悪の法則』のような、「おい何が起こってるんだ」ということはありません。
はじまりからたのしめそうなフォトモンタージュ的なオープニング。そこには、Dans la maisonというタイトルが。
「家で」とか「家の中で」とかそういう意味で、要は室内劇のような感じなのです。
登場する人物は限られていますし、ごく狭い世界でのちょっとしたスリルを味わうことができます。
主人公のクロード(エルンスト・ウンハウワー)は、とある高校に通っている数学の得意な男の子。彼は作文の授業で才能を発揮し、ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)という国語(文学といったほうがいいのかもしれません)の教師から教えを受けることになります。
クロードが描く世界は、中産階級である友人ラファエルの家の中。ラファエルの両親や彼のことを事細かに描写するのですが、そこにはフィクションもあれば、事実であることも。彼の綴る文章の魅力にとりつかれてしまったジェルマンは次第に夢中になっていき……という感じの展開です。

面白かったのは、ストーリーばかりではなく、映像的にもたのしめました。
突然第三者のようにラファエルの家族の中に、いるはずのないジェルマンが登場し、物語に茶々を入れたり、固定のアングルで撮った視線で家の中が撮られ、独特の世界観を表現したり…サスペンスを思わせるようなカメラワークだったりと、さすがはオゾン監督、そのへんも抜かりありません。

ストーリーとともにたのしめるのは、フランスの高校事情ですかね。
制服を導入することになるとあるフランスの高校。
先生たちの朝食会議があったり、居残り勉強させたり、クラスのみんなの前で作文を読ませたり。
あまり日本の学校と変わらない気もします。生徒のほうの主張が通りがちというところも。

それと、主人公役のエルンスト・ウンハウワー君は実は高校生ではなく21歳だそうですが、それを感じさせないみずみずしさがあります。オゾン監督が好きそうな俳優ですね。それと、名前をメモし忘れたのですが、ラファエルとお父さん役の2人もすごくインパクトがあって好きでした。ラファエル君のタレ目にはひきこまれるものがあります。ファブリス・ルキーニは、『しあわせの雨傘』に続いてオゾン作品には二度目の出演。かわいいおじさんを演じさせたらピカ一だなと思いました。奥さん役のクリスティン・スコット・トーマスもすごく美しかったです。イギリス人なのにフランス語が堪能すぎてうやらましいです…。ラファエルのお母さん役のエマニュエル・セニエは、クロードの文中でたびたび「官能的」といった褒め言葉がついていましたが、あくまでクロード目線だったのかな、と思ったり…(明言は避けます)。


この映画と比較して是非観たら面白いと思うのは、『小説家を見つけたら』(2000年)。
ガス・ヴァン・サント監督作で、ショーン・コネリーが主演という豪華な映画ですが、あまり知られていない、というか、わたしは知らなかったんですが、たまたまBSでやっていて観ました。
こちらは舞台がアメリカで、近所に住む一風変わった小説家に小説を教わることになる高校生の話。
主人公は黒人で、小説を教わるのは先生ではなく、近所の小説家、というのがどことなくアメリカっぽいといいますか。
『危険なプロット』のほうは、学校でかっちり先生に教わるというスタイルが何となくいい学校のフランスが舞台、という感じがしなくもないといいますか。
いえ、優秀なアメリカの学校でもきっと小説を教わることはできるんでしょうけれど。
対にして観ると結構両者の違いがでて面白いです。この映画には、マット・デイモンカメオ出演するのでそれも見逃せませんよ!

それと、文法や言葉の使い方など細かい文章の話がでてくるので、小説を書こうかな、と思っている方にも勉強になるかもしれません。

全然関係のないところで、わたしはイプセンの『人形の家』を思い出しました。家の中、というだけの話だけでもなく、家庭内の葛藤などを描いている近代的な家族の様子に共通点があるなと思って。




ついでのようにオゾン監督のフィルモグラフィー載せておきます。
わたしは『クリミナル・ラヴァーズ』以降は大体観ております。
どれがおすすめ?と言われると、やはり『8人の女たち』ですかねえ、キャストの豪華さから言っても。
とはいえどれも面白いですよ!

サマードレス Une robe d'ete (1997)
海をみる Regarde la mer (1997)
X2000 X2000 (1998)
ホームドラマ Sitcom (1998)
クリミナル・ラヴァーズ Les Amants criminels (1999)
焼け石に水 Gouttes d'eau sur pierres brulantes (2000)
まぼろし Sous le sable (2000)
8人の女たち 8 femmes (2002)
スイミング・プール Swimming Pool (2003)
ふたりの5つの分かれ路 5x2 (2004)
ぼくを葬る Le Temps qui reste (2005)
エンジェル Angel (2007)
Ricky リッキー Ricky (2009)
ムースの隠遁 Le Refuge (2010)
しあわせの雨傘 Potiche (2010)
危険なプロット Dans la maison (2012)




映画は、Bunkamuraル・シネマでアンコール上映していますが、13日までです!
映画館でご覧になりたい方は是非!